51 加藤正(1926~ ) 「それぞれの声で鳴く鳥たち」 



上村真澄(宮崎県児湯郡川南町)

52 加藤正(1926~ ) 「それぞれの声で鳴く鳥たち」   水彩  紙  29.5×38.3cm   2014年制作

第10回コレクション展に寄せて

はじめてコレクション展へ作品を搬入致しましてから1年が過ぎました。
新緑のまばゆい今、私の大好きな宮崎出身、宮崎在住の作家さんの作品をお運びいたしました。一点目、加藤正さんの「それぞれの声で鳴く鳥たち」は水彩画です。加藤先生の作品は、このコレクション展に向けて描いて下さったという、私自身に取りまして生涯の思い出になる作品。私は東京から郵送され待ちわびた作品。先生とゆかりの深い画家瑛九つながりのひまわり画廊さんへ額装の依頼に馳せ参じました。「あ~!加藤先生の作品!この作品はどうなさったのですか?」と質問から次々と地面から湧くが如く(笑)話題に尽きずしあわせ宅配便の様な楽しいひと時を過ごしました。ベージュ、ホワイト、グリーンの額と様々なマッチング。額装の色合いで引き立つ鳥が変わったのです。ユニークですね、まるで万華鏡だわ。最終的に当額装に決まったわけですが、それはピンクの鳥を引き立たせたかったからという物語があることを申し述べてみます。

52 黒木一明(1956~  )  「Seattle、Washington、USA、1996」 



上村真澄(宮崎県児湯郡川南町)

52 黒木一明(1956~ ) 「Seattle、Washington、USA、1996」   写真  紙  15.0×24.5cm   2009年制作

二点目、写真家黒木一明さんの作品は、写真集「The color of America」の中から、オーダーでご依頼させて頂いた作品です。黒木さんは私がわの会さんへつながる一番最初の大きな扉を開いて下さったアートの恩人。世界50か国以上を撮影で旅をなさる中、様々な風景が無限に広がる中でこの風景を「美しい」と捉えられるまなざしの「美しさ」を尊敬してやみません。桜は日本ばかりではなく、アメリカにも存在し、「美」は国境を超える素晴らしさがあるんだなぁと実感ひとしお。この作品の桜のような女性でありたいものですね。(笑)どちらの作品も、私の懐で非常に大切にしている作品ですが美しさが国境を超えるなら、巡回展にて皆様へ御目文字叶えて差し上げ、皆様の美学のヒントに、そして父のような加藤先生と兄貴のようなカズさんへのご恩返しの気持ちで今回は搬入させていただきました。

53 内藤瑤子(1985~ ) 「ドリブル」



山根康壮(千葉県柏市)
 
53 内藤瑤子(1985~ ) 「ドリブル」  パステル・黒鉛他  紙  14.0×20.0cm
2009年制作

 おちこぼれて卒業できなかった学校の放課後の校庭を想う。

54 山根康壮(1942~  )  「休憩(静物)」



山根康壮(千葉県柏市)

54 山根康壮(1942~  )  「休憩(静物)」  油彩  キャンバス   8F  2014年制作

 自動販売機の上に飲み終えたビンや缶が置いてあった。校正が面白いとおもい、持ちかえり見上げるかんじで台のうえに並べてみた。台のうえのビンと缶と、うしろの壁、描いている私の関係、とくに対象までの距離がかければとおもう。

55 岩間正男(1926~2013)   「ざしきわらし」 



堀 良慶(千葉県柏市)

55  岩間正男(1926~2013)   「ざしきわらし」  鉛筆・水彩・版画  50.0×35.0cm  制作年不詳
 一人の優れた、埋もれている作家が又一人静かに亡くなりました。画家、造形作家、岩間正男さんです。梅野隆さんは梅野記念絵画館で柏わたくし美術館のコレクション展を交換展として開いてくれました。梅野さんはこの「ざしきわらし」を見て次の様に呟いた。「NHKテレビで岩間正男さんを知って直ぐ個展会場で岩間さんに会いにいった。絵画作品も創作姿勢優れた作家であった。私は物故作家コレクターだが現存作家、岩間正男の作品を認めた。岩間正男を世に出したいと思い熱心に説得したが出来なかった。岩間さんの住む流山は柏の隣ですね。良い作家だよ!」と私に語った。少し時代を遡りますが私は柏市の桂林画廊でこの「ざしきわらし」を求めました。個展のオープニング・パーティで岩間さんを知りました。仕事で訪れた遠野市の文化会館にある造形作品群「遠野物語」数十点を見てあらためて作家の力を認識したのです。私は当時サラリーマンコレクター、出張の都度、時間があれば全国にある岩間正男の造形作品を見て回りました。その後、遠野市が岩間正男美術館設立計画を中止したというタイミングを捉え、私も岩間さんに熱心にプロポーズしましたが、「東北で岩間正男美術館を夢にしている若い人たちと約束している」と断られた。諦めきれない私は柏市の文化課長と一緒に是非、作品を柏にも残してくれと頼み込んだのです。(岩間正男は柏市の美術教師でした)それも断れました。何時の日か若き時期の東北の倉庫に眠っている岩間正男の絵画を見たいと思っています。

56 森藤山風(1943~  ) 「雨のち晴れ」



荒井よし枝(東京都中央区)

56 森藤山風(1943~  ) 「雨のち晴れ」  アクリル・墨(ミクストメディア)  紙 
42.5×33.8cm   2013年制作
              
以前から、木と山を描いてきた森藤さんが、長い沈黙を破って、3、4年前から絵の発表を始めた。それまでは、自分で納得のいく木の線が描けず、人を拒絶するような険しい山を描いていたそうだ。
山に拘るのは、そこで命が誕生し、成長し、そして土にかえっていく、「水を含んだ山は命の源」という考えからだ。
山と出会い、向き合ってきた森藤さんの山水画は、この小さな画面からでも、広々とした新緑の風や匂いが体中に感じられる。
先日の個展では、大きな襖に描いた山の風景画を何枚も会場の壁に並べていたが、圧倒されるというより、自分が山の中にいるような、不思議に心地よい空気を感じた。
じっくり観てほしい作品だ。

57 青木勤(1944~ )「コッツウォルズの光と風(花と田園)」



杉野和夫(千葉県流山市)

57 青木勤(1944~ )「コッツウォルズの光と風(花と田園)」 水彩  紙
 36.4×25.6cm 2012年制作

 この作品は、作家であります青木勤氏の2回目の個展(コッツウォルズの光と風Ⅱ)で開催案内のポストカードに載せられたものです。
 作品の魅力は、何と言っても英国の清涼で透明感のある空気が、画面上をスーッと流れ吹き抜けていくような爽快感と、水彩画とは思えない繊細で緻密な筆致にあると思います。
 今回、作家本人の作品に対する思いを次のようなメールによりいただきました。
 「ゆったり流れる時間、どこまでも拡がる田園、透明感のある空気、そんなぬくもりを一枚の絵の中で表現してみました。
 英国コッツウォルズの田園風景、花で飾られた建物を手前に思いっきり俯瞰にとらえ、どこまでも続くなだらかな田園の拡がりを大切にしました。
 何百年という歴史を育んできた「石の文化」がコッツウォルズの光と風に調和して不思議なオアシスのような世界であることに魅せられてしまいました。
 この殺伐とした時代にこの絵が人の心を少しでも「癒す」ことができれば、作家としてこんなに嬉しいことはありません。」
 なお、青木勤氏の3回目の個展が今年9月に減座大黒屋ギャラリーにて開催されます。

58 川崎光草子(1944~ ) 「メッセージ」

 

川崎光草子(東京都杉並区)

58 川崎光草子(1944~ ) 「メッセージ」  油彩  キャンバス  6S  2011年制作

この絵、描いた時は上下逆でした。好きな音楽を聴きながら、″この曲を絵にしたい″ と思って仕上げた絵でした。
2年ぶりに引っ張り出し、無造作に逆さまに置いて眺めてみて、あっ、この方が楽しいとそく思いました。ただ、自分の絵であっても何か新鮮さが欲しいという気持ちからそう見えるのかしら、という思いもよぎりましたが、結局、思い切って方向転換した次第です。

59 杉山惠子(1945~ )  「希望へ」



杉山惠子(千葉県柏市)

59 杉山惠子(1945~ )  「希望へ」   墨絵   和紙   44,5×51.8cm  2012年制作


 墨をイメージに溶け込ます。しかし、水墨画の描き方だけでなく、自由に、大胆にと言われても、千変万化に、初めは手も足も出ませんでした。水で廷し、厚絵に慌て、暈し、さてさて乾かしてみると、「失敗はない」、「こっからスタート?!!」と「山並にさす光が見える」、「描き込んでみよう」そこに滝を流し、家を描くと なぜか風景が 生まれる。
 墨に五彩あり。紙に、墨を遊ばせても、厚い、薄い、紙漉にも困る変化もあり、それ又、多彩。例えば、台湾産画仙紙「瑞雲」厚粉に胡粉を入れてある。中国産画仙紙「純緒紙」楮100%で作られ紙質硬い。
日本産画仙紙「田黄唐紙」藁の繊維を生かしている。と多種。
使う紙はどうにも、手探り、点を打つ、線を引く、「試してばかりでいないで」と、日々が過ぎてゆくばかり、そのような、思案の中、黒い煙、懐かしい機関車。希望を乗せ、前に進む。二〇一一年夏から描いた作品。
 

60 杉山惠子(1945~ )  「巨木」



杉山惠子(千葉県柏市)

60 杉山惠子(1945~ )  「巨木」   墨絵   和紙   4F   2013年制作

 黒の表現、水、滝、空気、雪、花---どっしりとした巨木、そして山。
 二色の墨を 光の輝き、木々の豊かな生命力。薄い墨から、濃さを変化させて、何度も薄墨を重ねて描いてゆく。白抜きも工夫して。
 まわりの人達のパワーあふれる作品には、目を見張り。やっと少し、多種多様さを眺める余裕がでると、自立と持てる限りのセンスを撒き散らしている人々に刺激を受けるけどどうやっても、誰として同じ作品はなかった。
 墨は二度と同じ様になかなかなかできにくい。まして、本人が生み出した作品は、水墨画でもなく、中には紙を糸で縫う作品や、抽象というより水と墨の微妙な表情の見せてくれる世界の複雑さ、各人のチャレンジの力作。
 見たからできると言うものでもない作品。
それぞれを、なる程と励みにして、さあ、まずは、どうする 巨木のたたずまい。