51 水野朝 (1945~) 「裸婦像」 



鈴木正道(千葉県柏市)

51 水野朝 (1945~) 「裸婦像」 ドローイング 紙 63.0×45.0cm
2005年制作


「この裸婦、大きな足だな。ジャイアント馬場の足だ」。この画を見て、ある知人が こう言った。まさにそのとおりだ。そのうえ、バストがない。髪をまとめた、若い女性 がうつむき加減で、もの思いに耽っているようだ。半ば閉じた眼がいい。
「瞑想」(Meditation) と命名してもよい作品であろう。 明治19年生れの、堅物の父親はヌード写真や裸婦の絵などを極端に嫌った。 同時代、人の最大公約数と言ってもよいものの見方、考え方であった。テレビが普及
し始めた頃、淡谷のり子が唄うところのシャンソンを聴いて、こう言った。「このバア さん、歌はうまいが、裸同然の格好で唄うこともあるまい」。大変懐かしい思い出であ る。もしこの画があったとすれば、オヤジも私を認めてくれたであろう。
この水野作品を眺めている時、それは単なる裸体画ではなく、仏像の雰囲気すら感じ させる。私はこう言いたい。「限りなく仏像に近い裸婦像」と。

52 山中現 (1954~) 「花」 



鈴木忠男(東京都江東区)

52 山中現 (1954~) 「花」 油絵具ほか ガラス 11.5×8.2cm
1993年制作


93年頃、G椿の個展でガラス絵を2点購入、内の1点、花に雨が降り注いでいる のか。先日のアートフェアで見た元永定正の小品に似た絵があった。89年に水彩・ コラージュ作品を初めて買って以来、その種を何点か蒐集したが、木版画家の木版画 を買っていない。油画、銅版画の作品もあり、作品集も刊行されている。
今になってみると初期のモノクロ版画に魅力を感じる、置き場がなく当時の版木は 廃棄したと聞く。年に何度か古本市で会ったりして、立ち話をする。
今年は「恩地孝四郎展」(近美)鑑賞中に声をかけられ、講演を聴きに来たという と、山中さんは知らなくて自分も聴いてみるという、感想をいいあった後、別れた。
最近は主に不忍画廊で個展をしている。

53 山中現 (1954~) 「フタツノヒトミ」



小山美枝(東京都西多摩郡)

53 山中現 (1954~) 「フタツノヒトミ」 木版画 紙
15.0×11.0cm 2011年制作


最近、各所で災害が起こっている。どこで何が起こるか、誰にもわからない。 この作品は、東日本大震災の折に、福島県出身の作者が制作したものである。

赤い瞳が潤んで、青い瞳からは今にも涙がこぼれそうだ。 この涙はなんだろう。 作者の涙、被災した方の涙、いろいろな人の涙、そして私の涙。 みんなの心の中にある涙。

泣いたらダメだなんて言えない。むしろ思いっきり泣けば心がすっきりすると思っ ている。ただ、みなそれを人前に出してはいないだけだ。と私は思っている。
恥ずかしいことだが、私はある時期、毎日夕方になると漠然とした不安にかられて 泣いていた。ある時、不思議なことだが友人からもらった言葉で何事もなかったかの ようにおさまった。
きっと、私と友人のような出会いもあるはずだ。 泣き止んだら、あとは感謝して前に進んで行けばいい。

54 大竹茂夫 (1955~) 「小鳥への説教」



伊とうはるこ(千葉県柏市)

54 大竹茂夫 (1955~) 「小鳥への説教」 テンペラ・油彩 パネル 4F
2016年制作


氏は、1982年青木画廊での初個展以来、精力的に進化を続けている画家である。
「独特の幻想的作品によって早くから注目を集めている。90年代以降、キノコ・菌 類の生態に魅せられ、その神秘的な世界からイメージを喚起し、不思議な物語世界を展 開している。また、数々の表紙画を手掛け、出版物を通しても広く知られている。」
(画集「物語の真っ只中」より一部引用)

2016年2月の青木画廊個展の際、この憧れの画家の作品を入手できた。とてもう れしく、我家の玄関ギャラリーの特等席を占めている。

55 ジャン・シャルル・ブレ (1956~) 「無題」 



横山俊樹(神奈川県横浜市)

55 ジャン・シャルル・ブレ (1956~) 「無題」 ミクスト・メデイア コラージュ 70.0×40.0cm 1987年制作


黄色の発色の鮮やかさと素朴なタッチがいたく気に入り30年ほど前、会社近くの 画廊で購入した。モチーフ「木を植える」については同行したイギリス人の同僚が、 ヨーロッパ男にとって生涯三大事業の一つとか説明してくれたこともあり納得した。
思えば仕事仲間の建畠覚三の息子から現代美術のランチ講義を受けたのもこの画廊 だった。残念ながら今は無い。
先日、横浜で村上隆のコレクション展があったが、圧倒的な存在感を見せていたの がブレの大作で青い「木を植える」だった。それは私が購入した数年後、ブレの個展 が再びあの画廊で開かれた時の目玉だったはずだ。
ブレの作品は同じ横浜美術館で1998年6月にイヴォン ランベールコレクション 展が開かれた時にも見た記憶がある。若い女性連れが現代美術に入場料を投じた午後 の暇つぶしの失敗を、くすくす笑ってごまかしていたのが印象的な、がら空きの会場 でだった。
ブレはコンセプチュアルアートの行き詰まり感を打開するヨーロッパ「自由具象派」 の傾向を代表するアーティストで、当時最高の画家とされていたことは後に知ったた め、作者のことを全く調べずに買った初めての絵といえる。

56 黒木一明 (1956~) 「Still Life」



上村真澄(宮崎県児湯郡)

56 黒木一明 (1956~) 「Still Life」 写真 紙
45.6×56.5cm 2015年制作


「芸術の中にイノベーションを -新しきが花である-」
風景写真家・黒木一明氏の作品から満を持して登場したのが今回初公開の「Still Life」です。アメリカで活動なさっていらしたとき、広告の作品を独学で学んでいたと話してくださいました。残したい作品のみを大切に残していらっしゃるご様子。 アンディウォーホルを思わせるポップなこの作品をご好意で見せてくださった時、「このまま埋めてはならない」と感じました。写真のカテゴリーに自由の翼を与えた瞬 間に立ち会ったような神聖な気持ちです。
先日読んだ世阿弥の風姿花伝(解説書)の文中に、「能は観阿弥が基礎を築き、世阿 弥が大成させ、まったくのオリジナルではないけれど、人々に好まれた様々な芸術の領 域を磁場のように引き寄せ現在の能の形となった」とありました。
経済学者シュンペーターはその有様をイノベーション、新しい結合によって経済に活 力が生れると学説を説きました。私はこの作品を通して自ら創造したものを写しだす斬 新さに畏敬の念を覚えます。
オブジェも、日本画も、油彩も、コラージュも写真で表現出来たなら・・・そう想像 するだけで私はうきうきしてきます。

57 内藤瑶子 (1985~) 「マスクの男」



山根康壮(千葉県柏市)

57 内藤揺子(1985~ )「マスクの男」 油彩 パネル(板)
   22.5×16.0cm 2003年 制作


冷静な目で自身を見ている、怖い程だ。

58 秋山俊也 (1986~) 「無題」

 

木村悦雄・正子(千葉県千葉市)

58 秋山俊也 (1986~) 「無題」 油彩 キャンバス 10F 額装:秋山俊幸 (父) 2003年頃制作


「秋山親子の」コラボレーション作品 今回の出品作は、「わの会」の会員でもある、絵画修復家・秋山俊幸さんのお子さん・俊也さんが東京銀座の画廊で初個展を開催した際(2003年)に購入した抽象油彩画である。年譜をたどってみると、初個展開催の時は作家十代後半。 気持ちよく目に染み込んできた色づかい、その組み合わせ、数ある作品の中から一瞬にしてこの作品に心を奪われたことを思い出す。 作品を購入した時点では無額状態、お子さんのせっかくの記念すべき初個展作品、我々夫婦どちらから言い出すわけでもなく、(額づくりも生業とされている)お父さ んに額をつけて頂いたら、更に作品に輝きが増すに違いないとの阿吽の空気が醸し出 された。お子さんの作品にお父さんが額をしつらえたコラボレーション、この作品に 限っては、絵画、額共に合わせての一体表現、その後、我々夫婦の間でこの時の事を 話題にする際は、「秋山親子の」が常の呼称になっている。
さて、我々の勝手な思い、絵を描いた秋山俊也氏の反応やいかに。

59 衣笠泰介 (1989~) 「Chinsco」



橋本昌也(京都市東山区)

59 衣笠泰介 (1989~) 「Chinsco」 油彩 キャンバス
32.0×32.0cm 2015年制作


衣笠泰介は、自閉症という側面を持ちつつ、幼少より独学で絵画制作を始め、これ まで数多くのグループ展において作品を発表し、また様々なコンクールで受賞を重ね てきました。この画家の特筆すべきものは、生来希有な知覚による際立った色彩感覚 であり、さらにいえば、自らに携わったプリズムの如き感性的メカニズムによって、 感知した光(対象)を増幅された多彩な色の集合体へとダイレクトに転換、抽出する 業といえます。
画面上では、純度の高い色彩が生み出すコントラストとリズムが自立した生動感を 生み出し、装飾性を伴う自由な画面構成とあいまって、観る者に新鮮な輝きと屈託の ない楽しさを喚起させます。
この人とともに在る光の世界を、果たして私たちも享受できるのでしょうか。他者 の記憶や解釈から心地よく遊離したこのマジカルな色彩世界は、この画家にだけ与え られた光の国からの啓示であり、いわば祝福された絵画と言えるかも知れません。

 

60 杉山惠子 (1945~) 「薫芳」



杉山惠子(千葉県柏市)

60 杉山惠子 (1945~) 「薫芳」 油彩 キャンバス 15F


黒髪の美しい女性でした。いつも顔立ちが十分に表現しきれず、後からイメージを 描きたし、手を入れました。
薫りたつ空気を伝えたいと思いました。