ひなつきみつか の美術読書
第四回 コノキ・ミクオ
芸術はたのしくてかなしくて世とともにあるもの
(美は遊ぶだけではない)
「コノキ・ミクオの詩と造形(ガンダ)100」
コノキ・ミクオ 2021年 ギャラリーステーション
この本は、月刊ギャラリー誌に2012年8月から2020年11月号まで連載された、見開き2ページの100回分を一冊にまとめたものである。
連載中は、なんだかスっと通り過ぎて、そのうちギャラリー誌も読まなくなって(失礼しました!) 遠のいてしまっていた。
しかし、本の形になってみて驚いた!この見ごたえはなに?
詩と造形(ガンダ)
「ガンダ」ってなに?解説にはこうあります。
「ガンダは(千葉県)銚子近辺の方言で、使い古して捨てられた鉄くずなどのこと」
それだけでは見なけりゃ分かりませんよね。
このコラムをご覧の方はパソコンかスマホを持っているが前提なので「コノキ・ミクオ」と検索GO٩( 'ω' )و
そう。ただ、面白い、楽しいだけに見えてしまう。私もこの本を見て読むまではそうおもっていた。
3.11からはじまり、政治、ロシア、新型コロナ、老い、すべてと向き合い形づくる。
それが、ガンダ。
コノキさんにしかないもの。
ガンダに言葉がつくと、楽しくもあり、悲しくもあり、ガンダたちの表情が豊かになる。
コノキさんは、この「言葉」についてあとがき「ご挨拶」にこう書いている。
「3.11の東日本大震災の直後は、私も茫然自失で絵を描く気力を失い、ただ戯言(ざれごと)みたいなものを書き散らしておりました。」
直感的な「戯言」が本質を突いていることは多々あることだとこの本を読むと強く思う。
この「直感的な戯言」がガンダとうまく結びつき、時代をスパッと切り取った稀有なものになって、私たちの前に姿を現したのだと。
だから、この本は今の時代を、残すためにずっとあり続けてほしい。そう強く願うのである。
時代は動き続ける。しかし変わらないものもあるだろう。
このあと、ガンダは「戯言」はどうなっていくか、見守っていきたい。