田村和司さんのよもやま絵話-------“美”とは?
                第14回  大谷房吉----日本の美を視る

 庭のサザンカが散り始めると椿が咲き始めます。
餌の少ない冬、メジロが蜜を吸いに、そして花を食べ散らかすヒヨドリがやって来ます。
おかげで木に咲く花はまともなものとはなりません。
私といえば、散った花の掃除に明け暮れる毎日となります。
それでも小鳥たちが来てくれることは、ありがたいことです。

好きな花、サザンカの絵を紹介したかったのですが残念ながら手元にありません。
代わりに椿の絵をお見せしたいと思います。
         

作者は大谷房吉。
本人によると正業は会社員、本業は絵かきと称していたようです。
そして、休日や空いた時間に描いた多くの絵を残してくれました。
師は梅原龍三郎。国画会で受賞し会員となりました。
杉本健吉、須田剋太、熊谷九寿などと大阪のデパートで「ともゑ会」を結び展覧会を開いています。

背景に屏風、壺は他の絵にも多く登場します。
構図はよく整い、全体をシックな色でまとめています。
昭和22年の作でサイズはF25号、作画に多くの時間が取れなかったためでしょうか
彼の作品は小品が多くこのサイズの絵は少ないと思われます。
今回、写真を撮るために額から外してみると裏面の木枠に
「 椿 大谷房吉作 第三回美術団体連合展出品 」と墨書されていました。

彼の画はご覧になればわかると思いますが、私には他の油絵とは異なり
日本画のような油絵に見えます。
和室、それも床の間に掛けるとピッタリくる油絵です。
近所の京料理店のご主人が気に入られ「三宝疳」を描いた絵を店内に掛けさせていただいています。お客さんの評判はすこぶる良いようです。
和風の部屋にシックルくる不思議な油絵です。

彼は絵の他に、川柳,和歌、俳句、随筆、謡曲、長唄などなど多くの趣味を持ちそれぞれ相当の腕前であったようです。
着物を着て油絵を描く彼の写真が残されております。
普段の生活、そして嗜好が日本的な美を表す絵を描かせたのだと思います。
------------絵は人なりです。-----------